愛縛占欲~冷徹エリートは溺愛を手加減しない~


話し出すと、彼は昔と変わらず表情豊かな人でよく会話が弾んだ。


「そういえばあの企画、かなり順調に進んでるよ。ありがとな」

「いえいえ、私は何も」

思いついたアイデアを出すので精一杯だった私。それを見兼ねて一ノ瀬さんがスムーズに行くようにアイデアをまとめてくれた。

でもあの時は一ノ瀬さんも褒めてくれたっけ。

そんなことを考えていると、ノックの音と共に店員さんが料理を持って入って来た。

頼んだ料理をつまみながら最初はお互いの仕事の話をして、それから私生活のこと。その後はお酒がほどよく回ってきたこともあり、お互いの恋愛についての話になった。


「今彼氏はいるの?」

「いないですよ」


あれから一度も。とは言わなかったけど、こういうのサラっと聞いてくるところが吉井くんらしい。というか、彼にとって私が元カノだったってことをカウントに入れているのかも怪しいけれど。


「吉井くんは?」


私が訊ねると彼は「俺もいないよ」と困ったように頭をかいた。


「最近は全然」


そういえば、一ノ瀬さんが吉井くんの会社は女性が事務の子だけになったって言ってたっけ?でも昔は女の人もいたってことだよね?きっと、モテただろうなあ。



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