愛縛占欲~冷徹エリートは溺愛を手加減しない~
「本当むさ苦しくて嫌になるよ」
「ふふっ」
私がくすりと笑うと、彼は目を細めてこっちを眺めた。今日初めてしっかりと目が合った気がする。
「変わらないな、夏帆は」
ドキン。
急に名前で呼ばれ、胸が音を立てる。
今まで居心地がよかったのになんとなく、落ち着かなくなって、私はすぐそばにあったグラスを煽った。
「変わらないって何〜?もしかして貶してる?」
そう聞きながらグラスを置いても、まだ彼の真っ直ぐな視線は私に向いている。
「違うよ。そうじゃなくてさ俺の話、笑って聞いてくれるところとかさ、笑顔が無邪気なところとか変わらないなって思ってさ」
「そ、そうかな?」
正直フラれた彼に変わらないと言われるのは複雑だ。喜んでいいのか分からない。
空になったグラスを見て吉井くんがメニューを私に渡し、店員さんを呼ぶ。さっき勢いよく煽ったアルコールが体を巡る。
いけない、飲み過ぎないようにしないと。
店員さんに注文を終えると襖が閉められた。
さっきまで盛り上がっていた会話も一度途切れた事で、シーンと静かになる。話を変えるチャンスかも。そう思って私が新たな話題を切り出そうとした時、吉井くんは言った。