愛縛占欲~冷徹エリートは溺愛を手加減しない~
「別れる時、俺ヒドイこと言っただろ?ずっと気にしててさ」
「気にしないでよ、昔のことだしさ。あの時は私もハッキリしなかったから」
「別れてから一言も話さなかったじゃん?社会人になってから俺のこと思い出す瞬間あった?」
「えっ」
なんでそんなこと聞くの?
彼の言葉に私は動揺する。思い出す瞬間はもちろんあったけれど、こう言う時なんて言うのが正解なんだろう。
頭の中で考えていて答えが出せずにいると、彼は困ったように眉を下げてつぶやいた。
「って、そんなこと聞かれてもって感じだよな」
こほん、と咳払いをした吉井くんは立て直すように言う。
「いや。俺なんだかんださ、あの時が一番楽しかったなって思うんだよな」
「そりゃあ吉井くんは人気者だったから。友達もたくさんいたし……」
「そうじゃないよ。夏帆と一緒にいたのが楽しかったなってこと。
ついでに言うと、大学卒業して社会人になってから夏帆は今何してるのか、とか気になったりしてたし」
「そ、そうなんだ」
「だから、会えて嬉しい」
真っ直ぐに見つめてくる瞳がぶつかる。どうしてこんなことになっているんだろう。