愛縛占欲~冷徹エリートは溺愛を手加減しない~
会計を済ませ店を出る。駅まで向かおうか、と言おうとした時、突然店の前の階段を踏み外した吉井くんが私の方へ倒れてきた。
「わ、ちょ、吉井くん!?」
咄嗟に支えると、抱きしめるような体制になった。アルコールが強く香り、もしかして酔ってる?と顔を覗きこむと、案の定彼の顔は真っ赤になっていた。
さっきはそんな風に見えなかったけど、立ち上がったことで酔いが回ったのかな?
「大丈夫?」
「うん、ごめん……」
そういえば吉井くん、大学の時もお酒が弱くて苦労していた気がする。周りには飲むようにはやし立てられ、代表だったから飲まないわけにもいかなくて大変な思いを……って今はそんなこと考えてる場合じゃないか。
「自分で歩ける?」そう聞こうとした時。「わっ!」彼は私の首筋に顔を埋めてきた。
「ちょ、ちょっと……!吉井くん酔い過ぎだって」
彼は私の首筋に顎を置いたままくてんと力を抜く。
「相変わらず肌、白いんだな」
熱ぽい声でつぶやいたかと思ったらあろうことか、そのままちゅっと首筋にキスをした。アルコールで上がった体温のせいか生暖かい感触が首すじを這う。
「んっ、ちょっと離れって!ほら、タクシー来たよ」
私は強引に吉井くんを引き剥がし、タクシーに乗せた。幸い、自分の住所は言えるようだったので、タクシーの運転手さんに任せてドアを閉めてしまった。