愛縛占欲~冷徹エリートは溺愛を手加減しない~



そういえば酒癖悪かったな。一緒に乗ったら危険だ……。大人になって酔い癖がヒートアップしてるようにも見えた。

タクシーの後ろ姿を見送ると、ようやく私はひと息ついた。


「まだ電車間に合いそう……」


私は駅までの道を歩いた。
駅の改札につき、改札を通ろうとすると向こう側に見慣れた人を見つける。


(ウソ……)


何気なく横に視線を向けた先にいた人。


(もしかして、一ノ瀬さん!?)


それはよく見慣れた上司だった。一ノ瀬さんは改札を出ようとこっちにやってくる。驚いて固まっていると、ばっちりと目が合ってしまった。

彼の隣にはスラッとした細身の女性。

とりあえず、挨拶しないと。そう思った瞬間、一ノ瀬さんは小さく人差し指を唇にあてる仕草をする。


挨拶はしなくていいって事だろうか。そんなことを考えているうちにどんどん距離が縮まっていく。

一ノ瀬さんが来る。

ドキドキと速くなる鼓動はアルコールのせいじゃない。そして私のすぐ横をすれ違う時、彼は小さくつぶやいた。


「そこで待ってろ」


えっ。

思わず振り返って彼を見た。だけど、一ノ瀬さんは一度もこっちを見ることなく隣にいる女性と去っていく。

後ろ姿をぼーっと見つめたまま、私は小さく言葉を零した。


「待ってろって、どういうこと」


一ノ瀬さんは戻って来るのだろうか。
見えなくなった彼の姿をしばらく見つめる。そしてスマホを握りしめ一ノ瀬さんを待っていた。



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