愛縛占欲~冷徹エリートは溺愛を手加減しない~
「あの、一ノ瀬さん私……彼と付き合ってるとかじゃなくて」
スタスタとひとり部屋の奥に行ってしまう彼を追いかける。すると彼は私を見ることなく、寝室のハンガーに上着をかけた。
「じゃあなんだ、アソんできたのか?」
「だから違うって言ってるじゃないですか!」
「どうだか、こんなに簡単に男の家にあがるくらいだしな。朝比奈がそんな女だとは気づかなかったのは盲点だよ」
「それは、一ノ瀬さんが来いって言うから」
「来いと言われれば誰の家でもあがるのか?」
「そういうわけじゃ……」
なんでこんなに責められないといけないの。
「だいたいなんでそんなに怒ってるんですか!」
さすがの私も我慢が出来ず、強い口調で言う。すると、ようやく一ノ瀬さんがこっちを向いた。
ドキン。
心臓が強く音を立てたのは、今まで一度も見たことのない顔があったからだ。
「うるせぇな」
仕事の時でもない、素を出している時でもないその顔に私は怖くなって後ずさりした。
「っ、きゃ」
すると、彼は私の手を掴みすぐ側にあるベッドに私を放り投げた。どさっとやわらかなクッション生地に支えられ、何が起きたか分からずフリーズする私に一ノ瀬さんは覆い被さる。
「一ノ瀬さ、ん?」
ベッドが軋む。一ノ瀬さんの表情は冷たかった。
「久しぶりに会って気持ちが盛り上がったりでもしたんだろう
男の香水の匂いプンプンさせて、こんな痕つけるなんて、お前もやるじゃん」
ドクン、ドクンとなる心臓。変に緊張しているのは一ノ瀬さんの様子がいつもと違うからだ。