愛縛占欲~冷徹エリートは溺愛を手加減しない~
「えっ」
『言っとくけど、今のキスが名残り惜しいって思ったらお前の負けだからな』
一ノ瀬さんが前に言った言葉。私はあの時、認めなかったけど、もし認めていたとしたら、一ノ瀬さんはどうしたかったんだろう。
「……思って、ないです」
小さい声で答えると、彼は静かに言った。
「じゃあ今、思えよ」
そっと手を伸ばして来た一ノ瀬さんにびくりと身体が強張る。しかし、伸ばされた手は想像していたよりも優しかった。
「朝比奈」
私の名前を呼んで、顎をそっと持ち上げて、ひどく優しいキスを落とす。
「んっ……」
さっきまでとは一転、触れるだけのキスを繰り返す一ノ瀬さん。ちゅっ、と音を立てながら私を優し眼差しで見つめる。
「なあ、思った?」
なに。この表情。
勘違いしてしまうそうになる。
「んっ、……ぅ」
身体が熱くて、くらくらする。
「思ってな、……」
「ダメ、思うまで放さねぇから」
一ノ瀬さんの熱っぽい声が身体の奥に響いてゾクゾクする。私は意地でも認めたくなくて、必死で首を振った。