愛縛占欲~冷徹エリートは溺愛を手加減しない~
「はやく思えよ」
ひくく、あまく落とされた声。ぐずぐずに溶けてしまいそうな思考を必死に奮い立たせても、また次のキスでとろけてしまう。
「夏帆」
「んぅ……」
またキスで唇を塞がれた。
なんで名前で呼ぶの?
なんでキスなんてするの?
一ノ瀬さんは何を考えてるの?
頭に浮かぶ疑問は甘いキスによってすぐにかき消されていく。繰り返し口付けられた唇はもう感覚があるかどうかも分からなかった。
「っ、は」
やがてゆっくりと唇が離れていくと、私はようやく一ノ瀬さんの顔を見ることが出来た。
彼のことだから、にやりと笑って勝ち誇った顔をしてるんじゃないか。そう思っていたのに一ノ瀬さんの表情を見た瞬間、私は息を詰めた。
いつもと違う余裕のない表情。目は僅かに潤み頬は紅潮している。顔の温度がドッと上昇したのが分かった。
「いちのせさ、」
「なんか、俺のが振り回されてるみたいでムカつくな」
目を逸らしながら口を尖らせてそんなことを口走る。
意味わかんない。この人は何を考えているんだろう。
知りたい。一ノ瀬さんの考えてること、全部知りたい。
そう思って、口を開こうとした時、彼は言った。
「お前に正体を見られたのは失敗だったかもしれない」