愛縛占欲~冷徹エリートは溺愛を手加減しない~
「出来た」
んーっと伸びをひとつ。資料が完成する頃に時刻は18時を指していた。
「一ノ瀬さんはどこだろう」
出来上がった資料をプリンターで出力すると、部屋を出て一ノ瀬さんを探す。
出したらすぐに帰ってゆっくりしよう。
しかし、オフィスを探してみるけれど見当たらない。
もしや外出?なんて思っていたところ、会議室のガラス越しに彼の姿を見つけた。
ドアノックをしようとしたところで、私の動作がぴたりと止まる。
なぜならそこにいたのは一ノ瀬さんだけではなく、うちの会社の受付をしている女性も一緒だったからだ。
しかも、なんだろう。なんとも言えない雰囲気だ。
彼女は恥ずかしそうに顔を隠すと、遠慮がちに口を開いた。
「一ノ瀬さんのことが好きなんです」
小さいけれど確かに聞こえてきたその言葉。まさかこんな時も告白されているなんて、どれだけモテるんだろう。この人は。
思わず、息を潜めて壁に沿うように隠れる。
一ノ瀬さんは彼女の告白を受けるんだろうか。
「ごめんね。申し訳ないけれど……今は仕事の方に専念したいから」
口の端を持ち上げ、穏やかな笑みを作ってみせると、彼女の頬がわかりやすく染まった。