愛縛占欲~冷徹エリートは溺愛を手加減しない~
この時も無理やり笑顔を作ったが、その笑顔は引きつっていただろう。不快感は込み上げる。
『チッ、なんであれが上司なんだよ。
やる気ねぇなら最初からこっちに回せよ』
上司が去っていった後、吐き出すようにつぶやくと俺は深いため息をついた。
人のミスの謝罪から入り、相手の顔を伺わなくてはいけない一番めんどくさいパターンだ。
クッソ。自分の尻拭いくらい自分でしろよ。
しかし、こうしていたところで何も進まない。気を取り直して、オフィスに戻ろうとした時、どんっと肩がぶつかった。
『……っ、すみません』
ばらばらと書類の散らばる音と共に朝比奈が視界に映る。
『す、すみませんでした……』
彼女は頭を下げると、慌ててそれを拾った。しかし、慌てすぎて上手く拾えていないのか、手からするっと書類が溢れてふたたび落ちていく。
『大丈夫?』
『すみません、本当に』
めんどくせぇな。
必死に俺に謝る姿も、モタモタしているところも。正直イライラしていたこともあってか、俺は素早くしゃがむとバラけた書類をまとめて彼女に渡した。
『どうぞ』