愛縛占欲~冷徹エリートは溺愛を手加減しない~
『ありがとうございます』
目を背けたままお礼を言う朝比奈。そういや、コイツ俺の顔全然見ようとしないよな。
目が合うと顔を赤らめたあとすぐに顔を逸らされる。話しかけるたび、毎回その反応。
もしかして俺のことが好きなのか?
俺はじっ、と朝比奈を見つめると去り際に、いい上司らしく自慢の笑顔を作ってアドバイスをしてやった。
『朝比奈さんはもう少し、自分に自信持ってもいいと思うよ。よくやってくれているから』
すると突然、朝比奈は顔を上げて言った。
『一ノ瀬さん、今日なにかお疲れですか?』
『……っ』
初めて目が合ったことにも、俺の変化に気づいたことにも驚いた。
『ど、どういうことかな?』
なんだよ、突然。
おどおどしている割にはキリっとした目をしていて、見透かされてるみたいな気持ちなる。
俺の何を知ってる?なんなんだ、コイツ。
『す、すみません。突然変なこと言って』
『いや、構わないよ』
こほんと咳払いをして笑うと朝比奈は小さく呟く。
『似てたから……』
いや、誰にだよ。
そう口に出したい気持ちをぐっとこらえて俺はその場を後にした。
「変な奴……」