愛縛占欲~冷徹エリートは溺愛を手加減しない~
「一ノ瀬さんのこと、ずっと苦手でした。
要領が良くて、キラキラしてて、少し……吉井くんに似てる、そう思ってたからです」
あの時の私はずっと想っていた彼と似ていると思っていた。だから一ノ瀬さんは私にとって苦手であり、少し気になる不思議な存在だった。
「でも全然、違いました……」
私が勝手に重ねていただけだった。似てるところなんて、ない。そう分かってからも一ノ瀬さんが気になるのは私が……。
「一ノ瀬さんのことが好きです」
彼を好きだからだ。
今までずっと前に進め無かった恋愛。好きという言葉をよりによってこの人に言うなんて思いもしなかった。
すると一ノ瀬さんは私と視線を合わせるようにしゃがみこむ。そして信じられないとでも言いたげな顔をして尋ねた。
「本気か?」
伺うような弱気な言葉は一ノ瀬さんらしくない。私がこの人をそうさせたんだと思うと僅かな独占欲さえ沸いてきた。
「本気です……一ノ瀬さんは冗談な、の?」
私が不安気に聞き返すと彼はふ、と静かに息を吐いてから言った。
「そんなわけあるか」