愛縛占欲~冷徹エリートは溺愛を手加減しない~
そして私を引き寄せると優しく包み込む。触れるように抱きしめられると心がほっとした。ドキン、ドキンと心地よく鳴る心臓はどちらの音かは分からない。
「夏帆」
やさしく細めて私の名前を呼ぶ一ノ瀬さん。
「一ノ瀬さん……」
私が呼び返したら彼は私の頬に短くキスをした。
「好きだ」
それから耳にキスをして、それから唇にそっとキスをする。
「んっ、」
ちゅっと音が響いた瞬間、びくりと体が跳ねた。
「やっ……」
「いや?」
分かってるクセに、意地悪な一ノ瀬さん。でも、声はいつもより優しい。
「……ズルい」
私はポツリとつぶやいた。
「なんで?」
「だって、結局私の方が負けちゃったじゃないですか」
「それのことかよ」
一ノ瀬さんは呆れ顔で私を見ると、目を逸らしながら言った。
「そんなの、俺の方が先に決まってんだろ」
「なにがです?」
「お前に惚れたのが」
「……っ」
まさかそんなストレートな言葉が返ってくると思わなくて、顔の温度がドッと上昇する。
なに、これ、思った以上に恥ずかしい。私は誤魔化すように一ノ瀬さんを茶化した。
「じゃあ、一ノ瀬さんが負けってことで」
「負けでいいよ」