優しいスパイス
向かいの椅子が音を鳴らして、彼がそこに座る。
続けて私も椅子を引いて座ると、向かいの彼の視線が私に向いて、心臓が飛び跳ねた。
慌てて視線をランタンに落として、鼓動の音を聞きながら淡い光を見つめる。
なんだか、急に緊張する。
ざわざわと騒ぐ心臓に押されて、「えっと、」と声を出した。
「こ、ここ、お洒落です、ね」
目を合わせないまま言うと、「ああ」と短い返事。
また、沈黙。
目に映るランタンの淡い光がわずかに揺れて、向かいの彼が動いたのを感じた。
緊張と、なぜか高揚までもが、お腹の中で渦巻いている。
鼓動を耳で聞きながら、そっと視線をあげると、彼は頬杖をついてメニューを手にとり眺めていた。
伏し目がちな瞳に、黒い睫毛の影。
頬杖を軸にして斜めに傾いた顔が、物憂げな表情を醸し出している。
息をするのも忘れてそんな彼の姿に目を奪われていると。
伏し目がちだった切れ長の目の上に、二重の線がくっきり刻まれ、優しい色を浮かべた鋭い視線が私に向いた。
ドクン、と鼓動が音を立てる。
「ショートケーキとレアチーズケーキ、どっちが好き?」
頬杖を解いた彼がそう言って、顔を私の方に向けた。
「れ、レアチーズケーキ……」
答えると、タイミングよく店員さんが席にやってきた。
もしかしたら少し前に彼が呼んでいたのかもしれない。
「ご注文お決まりでしょうか?」
「レアチーズのケーキセット二つ」
「かしこまりました。以上でよろしいですか?」
「はい」
短いやり取りを終えて店員さんが立ち去る。
もしかして、コーヒーだけじゃなくケーキまで奢ってくれるつもりなの?
どうしよう、と彼に視線を向けると、彼がまるで「大丈夫」とでも言うように優しく表情を緩めた。
続けて私も椅子を引いて座ると、向かいの彼の視線が私に向いて、心臓が飛び跳ねた。
慌てて視線をランタンに落として、鼓動の音を聞きながら淡い光を見つめる。
なんだか、急に緊張する。
ざわざわと騒ぐ心臓に押されて、「えっと、」と声を出した。
「こ、ここ、お洒落です、ね」
目を合わせないまま言うと、「ああ」と短い返事。
また、沈黙。
目に映るランタンの淡い光がわずかに揺れて、向かいの彼が動いたのを感じた。
緊張と、なぜか高揚までもが、お腹の中で渦巻いている。
鼓動を耳で聞きながら、そっと視線をあげると、彼は頬杖をついてメニューを手にとり眺めていた。
伏し目がちな瞳に、黒い睫毛の影。
頬杖を軸にして斜めに傾いた顔が、物憂げな表情を醸し出している。
息をするのも忘れてそんな彼の姿に目を奪われていると。
伏し目がちだった切れ長の目の上に、二重の線がくっきり刻まれ、優しい色を浮かべた鋭い視線が私に向いた。
ドクン、と鼓動が音を立てる。
「ショートケーキとレアチーズケーキ、どっちが好き?」
頬杖を解いた彼がそう言って、顔を私の方に向けた。
「れ、レアチーズケーキ……」
答えると、タイミングよく店員さんが席にやってきた。
もしかしたら少し前に彼が呼んでいたのかもしれない。
「ご注文お決まりでしょうか?」
「レアチーズのケーキセット二つ」
「かしこまりました。以上でよろしいですか?」
「はい」
短いやり取りを終えて店員さんが立ち去る。
もしかして、コーヒーだけじゃなくケーキまで奢ってくれるつもりなの?
どうしよう、と彼に視線を向けると、彼がまるで「大丈夫」とでも言うように優しく表情を緩めた。