優しいスパイス
あたしと春木先輩が付き合うことになった時──あの時も、そうだった。



だから、あたしはすごく不安になった。



紫映は本当はまだ春木先輩のことが好きで、あたしの為に綾月くんと協力して付き合ったフリをしたのかもしれないと思って。



本当は、付き合う前から、そうなんじゃないかって疑うところもあった。



でも、春木先輩のことが好きなあたしは、そうだと断定することができなかった。



それに、綾月くんは、紫映があれほどまでに片想いし続けた相手だったから。


きっと、本当に紫映は綾月くんと再会して好きな気持ちが溢れて付き合ったんだ、って。



そう確証が欲しかった私は、ダブルデートに誘って二人の様子を伺った。



二人はダブルデートを抜け出すし、連絡も寄越さないから気になって探したら手繋いでるし……その後日には二人で遊園地へデートに行ったらしいし。


そういうわけで、全部あたしの取り越し苦労だったわけだけど。



まぁ、そりゃそうだよね。



ふと、高校の時の紫映を思い出す。



綾月くんの話をする時の、恋する顔。



少し切なくて、優しくて、綺麗。



まるで紫映の性格そのままだなぁなんて思いながら、いつも見ていた。
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