優しいスパイス
私の初恋は中学一年だった。



相手は、明るくて人懐っこい隣の席の男子。



野球部の坊主頭と、ニッと歯を見せる笑い方が特徴的で、引っ込み思案な私にもいつも話しかけてくれていた。



学年が上がってもずっと好きだった。



だけど。



中学三年のある日、友達から彼のことが好きだと告げられた。



協力してほしいと頼まれ、承諾してしまう。



気持ちを押し殺して友達の協力をする日々を過ごし、高校受験も、わざと二人とは違う学校を受けて合格。



そうして卒業式の三日前――クラスのみんなで行った遊園地で。



友達は、彼に告白した。



私は、友達の待つ告白場所まで彼を連れていく役目だった。



その時に彼とした会話は、今でも覚えている。



「なぁ。噂で聞いたんだけど、西高受かったんだろ?」


「……うん」


「そっか。じゃあ俺とは別の高校だな」


「……そうなんだ」



「そうだ! このまま二人で観覧車乗らね?」


「えっ?」


「卒業したら喋る機会なくなんじゃん」


「いや、えっと、でも、先について来てほしい場所があって……」


「あぁ、そっか。じゃあそのあと観覧車な!」




その約束は、きっと忘れ去られた。




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