優しいスパイス
大学生になり、私は親友と同じ大学に通うことになった。



「学部は違うけどさ。サークルは同じところ入りたいね!」


「うん!」



入学式の日、校門から校舎までの空間にはサークル勧誘の人だかり。



立ち寄りながら校舎に向かっていると、ゴスペルサークルという人たちから声をかけられた。



「入学おめでうございます!」

「先輩達もみんな優しくて楽しいサークルですよー!」

「よかったら、来週ゴスペルコンサートがあるんですけど、見にきませんか?」



相槌を打って通り過ぎようとすると、行く手を塞がれた。



「一度だけでいいんで、来てください!」

「見学だと思って気軽に……」

「合わないと思ったら、それっきりでいいんで!」



サークルの勧誘も人が集まらなくて大変なのか、なかなか強引。



「どうかお願いします!」



頭を下げられて、親友と顔を見合わせた。



「どうしよう……一回だけなら行ってみる?」


「うん……そうだよね」



必死な様子が少しかわいそうにも思えて、「じゃあ、」と承諾しようとした時。








「そこのお二人さん! さっき先生に呼ばれてたよ」



男の人の、明るい澄んだ声が飛んできた。



「えっ?」



振り返ると同時に、ブワッと春風が頬を撫でる。



目に映ったのは、ふわりと揺れる柔らかそうな栗色の髪。



胸を揺する無邪気な笑顔。



「早く早く!」



手招きする、知らない男の人。




「えっと……?」


「え、何だろ、あたしら何かしたっけ……。早く行こ」



親友に腕を引かれて、勧誘の輪を抜け出た。









「危なかったね。アレ、サークルを装った宗教団体だよ」



彼の元へたどり着いたと同時に、そんな事実を告げられた。



「え……。じゃあ、先生に呼ばれてたっていうのは……」


「嘘だよ。驚かせてごめんね」



助けてくれた彼は、ニッと歯を見せて笑う。



「あ、ありがとうございます」


「いいよいいよ」



その、彼の笑顔が。



「あ。じゃあさ。お礼の代わりに天文研究サークル入って!」








初恋の人と似ていて。












――――私の、新しい恋が始まった。


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