拘束時間   〜 追憶の絆 〜
『初デート .。.:*・゜゚』
「沙綾って、かわいいよな......」
 
いつもの小学校の帰り道。クラス一、無口な優斗君が私に言った。

「ホント!?」

おしゃべりな私はすぐに反応した。そしたら優斗君は、顔を真っ赤にして下を向いて......頷いた。
 
「......うん、本当」

ーー これが、私の聞いた彼の最後の言葉だった。

次の日、学校に行ったら臨時の全校朝会があって、昨日の学校の帰り道に優斗君が大きなトラックに、はねられて亡くなったことを知った......。

「優斗君......!優斗君......っ!!」

私、優斗君のこと好きだったのに......。


ーー Pi Pi Pi......Pi Pi...... Pi......

「......」

ーー Pi Pi......

「......う〜ん......もう......、朝......?」

新米OLの朝は早い。

今年、大学を卒業した私は商社に就職した。

また、あの夢だ。

ーー 私の初恋は苦い。......ううん、とても苦しいものだった。

優斗君は私に初めての恋と大切な人の死という悲しみの、相反する感情を同時に教えてくれた。

たとえ変えることのできない宿命だったとしても。どうして彼が、その役目を背負わなければならなかったのか……。

この世界に取り残された私は深い傷を負った。

その分、優斗君の魂が天国の一番高い所へ運ばれるように、神様に祈り続けた。

あの初恋を失った日から、私の恋心は透明な糸で縛られて。今もなお、拘束されたままだ。

ーー いつか、私の前に王子様が現れて。その糸を断ち切ってくれることを願うも、それが優斗君であることを私は未だ切に願っている。

もうとっくに。優斗君と私の住む世界は、冷酷な星の巡りに引き裂かれてしまったというのに……。


優斗君が最後に見た景色は一体どのようなものだったのだろう?

そして、優斗君が最後に、いだいた感情は果たして、どのようなものだったのだろうか……?

どうか、彼が最後に見た景色が怖いものではありませんように。

どうか、彼が最後に、いだいた感情が後悔ではありませんように。

その分、私が優斗君への後悔と彼を失った悲しみを背負うから......。

大丈夫。私はもう、22歳の大人。

ーー それでも思う。事故から12年経った今でも、優斗君はどこかで生きているのではないかと。

そんな幻想から逃れられないのはきっと、私が優斗君のお葬式に行っていないからだろう。

私だけではない。クラスの友達、校長先生、担任の先生ですら誰一人、優斗君のお葬式に行った人は居なかった。

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