拘束時間   〜 追憶の絆 〜
 10コール近くだったと思う。

 俺から彼女への電話は、無情にも留守番電話に切り替わり無機質なアナウンスが流れた......。
 
 「俺......、怜斗だよ。沙綾、本当にごめんね! とにかく話がしたい。今日、仕事が終わったら。また連絡するよ......」

 ”俺”の、あとに名乗る名前。『優斗』か『怜斗』か。

 俺は、『怜斗』を選んだ。

 生まれついての名前で沙綾を愛する。そう決めた ーー。

 そのことを、今夜きちんと彼女へ伝える。

 ......今までのことも。

 彼女へのメッセージを残して電話を終え、俺はスマホをスーツのポケットにしまった。

 その直後、スマホのバイブレーションが作動して電話がかかってきたことを知らせた。

 俺は、彼女からではないかと思い。着信画面を確認せずに、急いで手探りでスクロールした。

 「もしもし......!」

 「怜斗か?午前のプレゼン、お疲れさん。さっそくなんだが、お前が出した企画を使いたい。午後に社長室まで来てくれ」

 「はい。わかりました」

 電話は、この会社の社長であり俺の叔父である、藤川 忠行社長だった。

 叔父さんは、俺が二十歳で『優斗』に改名したあとも。ずっと俺を『怜斗』と呼んでいた。

 ーー 俺の企画が通ったのなら、浦田さんとの勝負に勝ったことになる。

 そうすれば、沙綾が浦田さんに無理矢理食事に誘われることはないだろう......。

 彼女を守れてよかった ーー。

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