拘束時間   〜 追憶の絆 〜
 社長直々に呼ばれた俺は。午後の仕事を後回しにして昼休憩後、一番に社長室へと向かった。

 「お呼びですか、社長」

 「おお。怜斗、待ってたぞ! 堅苦しい呼び方はやめろっ。いつも通り、叔父さんと呼べっ」

 叔父さんは、甥である俺に社長と呼ばれるのを極端に嫌う。

 叔父さんの子には娘しかおらず。優斗と俺を、まるで自分の息子のように可愛がってくれた。

 だから、息子のように思う俺に他人行儀な呼び方をされるのが寂しいのだろう.......。

 叔父さんは、人に垣根を作らない気さくで柔軟な人だ。だから『personal advertise』の、子会社である『GEED』の一人娘と結婚して婿養子に入ってもうまくやってこれたんだと思う。

 その点、俺は頑固で融通が利かないタイプだ......。

 そういうところは親父に似たんだと思う。

 だけど、それ以外は親父とは全く似ていない。

 外見もそうだけど、俺は心に決めた一人の女性を愛し続けたい。

 親父の愛人の子である俺がこういう風に思うのは、おかしいだろうか......?

 「お前の考えた企画を見せてもらった。短時間の間によくここまで考えたな!これなら、『personal advertise』でも十分に活躍できるだろう。いや、実はな。兄貴から早くお前を”うちに帰せ”って、うるさく言われてるんだよ。」

 「父さんが......?」

 俺が『personal advertise』に戻れば、沙綾と会社で会うことも出来なくなる。

 今、彼女と連絡がつかない状態の俺は内心戸惑った。

 そして、早急に沙綾と連絡をとって。うやむやになっている俺達の関係を解決したいと思った。

 俺の出生、沙綾と出会うまでの俺の人生を全て話し。そして決意を新たに、俺は彼女へプロポーズしようと決めた ーー。

 「今夜、今後の会社の経営方針と、お前の将来ことを兄貴を交えて話をしたいと思うのだが?」

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