拘束時間   〜 追憶の絆 〜
  取引先への対応が終わり、叔父さんが料亭に到着した。

「いやぁー。すまん、すまん!待たせて悪かったっ!」

大黒のような満面の笑みで平謝りされると、親父もつい口を噤んでしまう。

叔父さんの人徳が成せる技だ。

 「で?どこまで話は進んでるんだ?」
 
 「お前が呼び出したんだろう......」
 
 「ああ、そうだ。そうだった......。じゃあ、早速。おれから話をさせてもらっていいか?」

 そう言って叔父さんは俺の方を見て、今日のプレゼンについて話始めた。

 「あれほど密度の高い内容をよくも短時間の間に、しかもコンパクトにまとめることが出来たな。大層感心したぞ」
 
 「ありがとう、叔父さん。でも、実際は俺だけの力じゃないよ。一課の課長や、先輩が協力してくれたおかげだよ」

 確かに企画を考えたのは俺だけど、実際には一課全員で取り組んだことだから決して自分一人の力ではないと思っている。

 「優斗、お前成長したな......。周りの人に感謝して思いやりを持てるようになったな。まぁ、お前が大人になったのは仕事のおかげだけではないような気もするが......」

 叔父さんと俺の間を割って入ってきた親父の話は、沙綾とのことを言っていると分かった。

 「優斗、忠行は知ってるのか?お前に同期の恋人がいること」
 
 「父さん......っ!」

 「なんだ、そうなのか!?同じ課の子か!?」

 「いや、その......」

 彼女との関係がはっきりしない今、俺は親父と叔父さんに何と応えたらいいのか困惑した。

 「なんだ......。上手く行ってないのか??」

 俺の顔が曇っているのを見逃さなかった親父は、透かさず尋問してきた。

 「最近、会ってない。」

 「ケンカでもしたか??後悔するなよ。お前は好きな女の子と結婚しろ......」

 
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