拘束時間   〜 追憶の絆 〜
財閥の御曹司という立場でありながら、許婚がいない俺は自ら心に決めた愛する女(ひと)と結婚できる ーー。

俺が愛人の子でよかったと思うのは、愛の無い政略結婚とは無縁になれるところだ。

優斗は俺と違って正妻の子だ。生まれた時から財閥の御曹司だった優斗にはきっと許婚がいたはず。

しかし、親父はもとより。周りからも、そんな話を聞いたことはなかった......。

「そういえば。俺に許婚はいないけど、優斗にはいたの??」

「お前にも、亡くなった優斗にも。元から許婚はいない」

親父は、きっぱりと言い切った。

財閥や大会社が婚姻によって提携を結ぶのは企業戦略の一環。

親父も、叔父さんも......許婚がいたり、政略的な結婚をして会社を存続してきた。それなのに、『personal advertise』 の、正妻の子である優斗に許婚がいないなんて不自然だ。

何か理由があるのだろうかと考えた俺は、思い切って親父に聞いてみることにした。

「父さん。俺は、ともかく。どうして亡くなった優斗にも許婚がいないんだ?あいつは、この家の生まれついての後継ぎだろう......」

「優斗......、いや怜斗。お前にはこの話をしたことがなかったな。亡くなった優斗にもだ。いい機会だ。いいか、怜斗。今からお前の母さんの話をするぞ。よく聞け......」

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