拘束時間   〜 追憶の絆 〜
......嬉しい。

私は頬が綻んだ。

でも、胸の奥が”キュン”と絞られているから瞳が潤んだ、少し切なげな笑顔だ。

彼にはどう映ってる?今の私......。

ちゃんと伝わってるかな?

私、怜斗に抱かれたいって ーー。

「そんなに、愛らしい顔をしないで。俺、沙綾にそんな笑顔を向けられたら想いが溢れすぎて優しくできないかもしれないよ?ねぇ、だから少し瞳を閉じていて.......」

彼は、なんだか泣いているような顔をしていた。そうか、最高に心が震えると勝手に涙が流れたりするのはこういうことなんだ。

私は、彼に言われた通り。ゆっくりと瞳を閉じた。

瞼の裏に思い描くのは、愛しい男(ひと)との甘いキス。

「ん......」

小鳥のように啄むように触れたキスは時間が経つごとに深くなり、私は唇から全身に広がる快感に身体の自由を奪われていった。

もう.......っ、立っていられない ーー。

力が抜けた私を支えるようにして抱き上げた彼は、そのままベッドへと運んで私の身体を広いシーツの海へ降ろした。

身体中へのキスを受けながら、私は身をよじり夢中で真っ白いシーツの海を泳いだ。

「かわいい.......。沙綾.......っ」

”沙綾”と呼ばれるたびに、身体中の細胞が目覚めたように敏感になって、私は自分でも知らなかった身体の感覚に身悶えていた。

「ぁっ......ん......っっ」

「沙綾は、寒がりのはずなのに。今は肌がとても熱くなってる......。俺の熱、ちゃんと受け止めてくれてるんだね」

「う......ん......っ、でも。怜斗も寒かったでしょ?ずっと北極圏の国にいたんだもん......っ」
 
吐息の合間を縫って、私達は会話を重ねた。

「.......うん。寒かったし、それに真っ暗だった。カナダは”白夜”って言って真夜中になっても太陽が沈まない日が続くんだけど.......、俺の心には四六時中、太陽が昇らなくて......。沙綾が居なかったから」

「怜斗......、ごめんね......。私、もうどこにも行かないから」

私はそう言って、火照った指先で彼の首元を優しく包んだ。

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