拘束時間   〜 追憶の絆 〜
私に首元を抱かれた彼は感極まった様子で言った。

「温かい......」

「怜斗も温かいよ。それに優しい.......。怜斗は初めて会った時から、私に優しくしてくれた。どうして.......?」

「それは、沙綾が俺の初恋の女(ひと)だから」

「え......」

唇で優しく素肌に触れられながら。彼の言ったことが理解出来ずに”ぽーっ”とした顔を見せていると、彼は目を細めて、その意味を教えてくれた。

「優斗がね。引っ越してから俺宛に送ってくれた手紙に添えられていた、運動会の写真に沙綾が一緒に写ってて......。すごく可愛かった......。どこのお姫様かなって、真面目に思ったよ。目を凝らして写真に写った名札を見たら『まきむら さや』って。会社で沙綾に初めて会った時、すぐに分かった……。これが俺の沙綾への最後の秘密だよ」

彼はそう言うと、笑顔で”チュッ”と弾むようなキスをくれた。

ーー 怜斗、私。運命は非情とか私達を引き裂こうとしているとか思ってたの。でも、運命の赤い糸はずっと結ばれていたんだね。

もう、その糸はきっと。あなたの瞳の色と同じ琥珀色に染まってる......。

そして、その糸を結びつけてくれたのは優斗君。

満点の太陽の日差しを浴びると髪に天使の輪がかかった優斗君は、本当に天使だったんだ。

優斗君は、怜斗と私を出会わせるために生まれてきたのかもしれない。

そして彼は、ちゃんと使命を果たして天に帰って行ったんだ。

だから、もう悲しくない。

優斗君へ。涙よりも、感謝と笑顔を ーー。

「カナダへ旅立ってから、名前を生まれついての『怜斗』に戻した。俺が二十歳で改名した理由は、亡くなったあいつの分も『優斗』という名前とともに生きようと思ってたからなんだけど......。でも、沙綾に出会って。どんどん好きになっていく度に優斗じゃなくて怜斗という俺自身で、沙綾を愛したいと思うようになった。」

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