拘束時間   〜 追憶の絆 〜
「沙綾っ!」

お母さん??

違う。

男の子の声だ。この声は?

......優斗君だ!

私は身体をベッドに横たわらせたまま、声のした方に顔を向けた。

すると、そこには私の初恋の男の子、優斗君の姿があった。

彼は真ん中に英字がプリントされている青いTシャツにベージュのショートパンツを履いて、私の記憶の中にある優斗君の最後の元気な姿をしていた。

病院の窓から差し込む太陽の光を受けて優斗君のツヤツヤで真っ黒な髪には天使の輪が光っている。

「優斗君!!生きてたんだ!!よかった......!!」

私は優斗君の元気な姿を目の当たりして、自然と涙がこぼれた。

「泣くな、沙綾」

優斗君は泣いている私に向かって、窘めるような眼差しを向けた。

それはまるで、親が子を躾けるような感じだった。

子供の姿をしているのに優斗君は私よりずっと大人な気がして、なんでも知っているように見えた。

それから優斗君は、ゆっくりと私の寝ているベッドへ近づいてきて今度は、なだめるように私の頭を撫でてくれた。

「沙綾、もう泣くな。笑って......」

「うん。うん......っ」

私は優斗君に頭を撫でられながら泣き顔で笑った。

「優斗君、ありがとう」

優しく頭を撫でてくれている優斗君へ私がお礼を言うと、優斗君は愛らしく微笑んで私に言ってくれた。

「沙綾、ありがとう......」

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