拘束時間   〜 追憶の絆 〜
優しい賛美歌が響き渡る中、未来への扉は開かれた。

参列者を包み込むチャペルの高いアーチ状の天井は天空を表現しているようで、白い翼を持つ”あどけない”天使のフレスコ画が描かれていた。

私は長く真っ赤なカーペットが敷かれたバージンロードをゆっくりと着実に踏みしめて、愛する男(ひと)のもとへと歩んだ。

両側を参列者に見守られながらも、彼等が今どんな表情をしているのか私には見えない。

私の瞳に映るのは。白いタキシードを身に纏い金の糸のような輝きを放つ髪に、長身でスラリと伸びた手足が洗練された印象を醸し出している、この世界でたった一人の”運命の人”。

彼は海のように広い心と、太陽のように熱い情熱で、私を愛してくれた......。

私達の軌跡は、きっと生まれた時から始まっていた。

だって、この出会いは。天使が授けてくれた宝物だから。

「一生、愛し続けるよ......」

神父の前で私の手を取り迎い入れた怜斗は、静かに燃える祭壇のキャンドルに横顔を照らされながら、熱く胸に灯る愛を唇から届けてくれた。

私は瞳を濡らして、彼に笑顔で頷いた。


ーー 琥珀色に染まった赤い糸の約束。

今、追憶の絆を固く結び。神の御前で、あなたと共に誓い合う......。

「戸川 怜斗さん。あなたは、牧村 沙綾さんを妻として。その命の限り、愛する事を誓いますか?」 

「はい。誓います」

「牧村 沙綾さん。あなたは、戸川 怜斗さんを夫として。その命の限り、愛する事を誓いますか?」

「はい。誓います」


You may kiss the bride......

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