拘束時間   〜 追憶の絆 〜
ある日突然、屋敷を飛び出して音信不通になってしまったシャーロットさんの消息は一向に掴めず、マイヤー伯爵がようやく愛娘の行方を突き止めた時、既に彼女は天国へ旅立った後だった ーー。

マイヤー伯爵は長年。愛娘のために墓を構えてくれた人といつか繋がることを願いながら、そして彼女と血の繋がった自分の孫にあたる子が、この世界のどこかに生まれて来てくれていることを信じて過ごしてきたという。

貴族の令嬢という身分を捨てて自らの意思で歩んだ怜斗のお母さんの人生は、伯爵家の一人娘として大切に育てられた女性にとって、大層険しい道だったに違いない。

そんなシャーロットさんの人生を愛情溢れる実りのある人生に変えたのは。何よりも彼女自身が真摯に人を愛し、そしてその証として怜斗を授かったからに他ならない......。

自ら人生を切り開き。ひたむきに生きた怜斗の母、シャーロットさんを私は同じ女性として、又、同じ子を持つ母として心から尊敬する。

そして、何よりも。怜斗をこの世界に生み出してくれたことに深い感謝を捧げたい ーー。


怜斗の祖父であり老齢のマイヤー伯爵は、その後。怜斗へ伯爵の称号と先祖代々受け継いできた広大な土地と莫大な遺産を譲りたいと申し出てきた。

伯爵の称号を得て遺産を譲り受けた怜斗は。幼い頃過ごしたカナダの孤児院への寄付と、世界中の孤児達の生活や学費の全面的な支援にあてた。


ーー 今は、あどけなく笑う子供達に。これから実りある未来が開かれますように。

そして、愛する人と出会えますように......。


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