拘束時間   〜 追憶の絆 〜
 未だ彼女は、男を知らない無垢な身体のままだろうか?

 いや、まさか......。
 
 ーー それでも、俺は実体のない誰かに激しく嫉妬してしまう。

 抱きしめられない彼女の残像は、俺を限界まで切なくさせる。

 衣服の下に隠された彼女の素肌を求める、男としての情欲が憎くてたまらない。

 どんなに身悶えようとも、遠いこの異国の地では到底。夢物語に過ぎないのだから ーー。
 
 それでも、壊すのなら俺の腕の中で......。

 唇を濡らして、淡い肌に優しく触れて行ったのなら。俺が望む、あの甘い声で彼女は鳴いてくれるのだろうか?

 彼女を抱きしめた数を数える。

 一度、二度、三度......、
 
 こうして俺は、孤独な夜を殺して行く。

 彼女への愛しさで孤独が癒された時、ようやく眠りに誘われて目を閉じると瞼に浮かぶのは、潮風になびく長い髪と日差しを浴びて輝く白い肌、そして、柔らかい唇......。

 俺は、記憶の中の彼女に呼びかける。

 「沙綾に伝えたい、大切なことがあるんだ」

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