拘束時間 〜 追憶の絆 〜
ーー 2018年 4月28日 ーー
戸川さんと私は、相棒を呼ぶ海猫の鳴き声だけが響く、春の海を水平線の彼方まで言葉無く眺めていた。
砂浜に車を乗り上げて車内から辺りを見渡すと、私達二人のためだけに青いパノラマが広がっていた。
戸川さんの車は誰もが知っている外国製の高級車 ーー。
波音を聞きながら彼は唐突に聞いてきた。
「牧村さんの初恋の彼と、俺って。似てますか......?」
「......いいえ。」
そう。似ていない。あのマンションも、この高級車も優斗君は手にしたことがない.......。
彼は車の免許も取らず、就職もしないで、この世界からいなくなってしまった。
「牧村さん......っ!」
「すみません......。恥ずかしいところを又、見せてしまって」
「さっき、俺が余計なこと言ったから。すみません......!」
以前、即座に私へハンカチを差し出した彼は、今日は長らく沈黙していた。
それは、私の頬に流れた涙を彼の指先で拭うことを迷っているからだと分かった。
私は、涙で濡れた頬に自分の指先を当てた。
それでも、放っておけない彼は、ティッシュボックスに手を掛ける。そして、数枚抜き取ると......手を止めた。
長い長い沈黙が続く。
「泣かないで」
彼の温かな指先が、私の頬に触れた。
私の胸は真ん中が、”キュゥッ”と絞られて鳴いた。
温かくて滑らかな彼の指先。
この感触 ーー。
昨夜、私が握った優斗くんの指先と同じ。
やっぱり、あれは夢じゃなかった。
ベッドの端で私を見つめていた彼は、戸川さんだった。
......どうして彼は、あんなに悲しそうな顔をしていたんだろう?
「外、出ましょう?」
涙を指先で拭ったあと、彼は私の頬を一撫でして砂浜へと誘った。
頬を撫でられた時、私は彼の唇を待ちわびている自分に気がついた......。
戸川さんと私は、相棒を呼ぶ海猫の鳴き声だけが響く、春の海を水平線の彼方まで言葉無く眺めていた。
砂浜に車を乗り上げて車内から辺りを見渡すと、私達二人のためだけに青いパノラマが広がっていた。
戸川さんの車は誰もが知っている外国製の高級車 ーー。
波音を聞きながら彼は唐突に聞いてきた。
「牧村さんの初恋の彼と、俺って。似てますか......?」
「......いいえ。」
そう。似ていない。あのマンションも、この高級車も優斗君は手にしたことがない.......。
彼は車の免許も取らず、就職もしないで、この世界からいなくなってしまった。
「牧村さん......っ!」
「すみません......。恥ずかしいところを又、見せてしまって」
「さっき、俺が余計なこと言ったから。すみません......!」
以前、即座に私へハンカチを差し出した彼は、今日は長らく沈黙していた。
それは、私の頬に流れた涙を彼の指先で拭うことを迷っているからだと分かった。
私は、涙で濡れた頬に自分の指先を当てた。
それでも、放っておけない彼は、ティッシュボックスに手を掛ける。そして、数枚抜き取ると......手を止めた。
長い長い沈黙が続く。
「泣かないで」
彼の温かな指先が、私の頬に触れた。
私の胸は真ん中が、”キュゥッ”と絞られて鳴いた。
温かくて滑らかな彼の指先。
この感触 ーー。
昨夜、私が握った優斗くんの指先と同じ。
やっぱり、あれは夢じゃなかった。
ベッドの端で私を見つめていた彼は、戸川さんだった。
......どうして彼は、あんなに悲しそうな顔をしていたんだろう?
「外、出ましょう?」
涙を指先で拭ったあと、彼は私の頬を一撫でして砂浜へと誘った。
頬を撫でられた時、私は彼の唇を待ちわびている自分に気がついた......。