拘束時間 〜 追憶の絆 〜
ーー 乾いた砂浜は、潮風を受けてサラサラと何処かへと流れてゆく。
私は、おぼつかない足取りで彼の背中を追いかけた。
彼は私を気にして。時々、後ろを振り返っては立ち止まり、日差しがまぶしそうな顔で笑顔を見せた。
二人で波打ち際までたどり着いた時、強い追い風が吹いて私の髪が彼の横顔に触れそうになった。
それを合図として、彼は私の方に振り向き優しい眼差しを向けた......。
「俺、牧村さんの保護者になります。......あ、保護者なのに敬語はおかしいね。......沙綾ちゃん」
「保護者......!?」
満面の笑みを浮かべる彼と、ただひたすら瞬きを繰り返す私。
「守らせて、沙綾ちゃんのこと」
この男(ひと)は、どこまで私の胸を”キュゥッ”と鳴かせ続けるんだろう......。
「あの......」
「沙綾ちゃんが泣き虫だってこと、俺よく分かったから。だから、守ってあげないと。......俺が君を守る」
穏やかな笑顔の印象が強い彼の真剣な眼差しは稲妻のように私の胸を貫いて、私は彼の瞳から目をそらせない。
追い風に煽れるように一歩一歩、彼と私の距離が近づいていく ーー。
その時。眩しい閃光が海岸を走った。直後に怒号の如く雷鳴が大空に響き渡り、途端に青空は顔色を変えた。
「きゃっっ!!」
「沙綾ちゃん、車まで走れる!?俺のジャケット、傘代わりにしてっ!」
戸川君は、自分のジャケットを脱いで私に被せると、更にむき出しの腕で私を包んで、車まで一緒に走った。
「春の天候は変わりやすいからね......」
彼は、すっかり濡れた自分の髪も体もおかまいなしに、私を気遣ってくれた。
「沙綾ちゃんが風邪ひいたら大変だ」
私は、濡れた彼の髪を自分のハンカチで拭いていた。そして、その手は彼の頬へと ーー。
すると、彼の忙しない動きが止まった。
ーー 私達は眼差しで気持ちを確かめ合い、唇がゆっくりと近づいていった......。
まるで魂が抜けたような瞳をした彼の唇が動いた。
「俺、沙綾ちゃんに伝えたい、大切なことがあるんだ......」
「え......っ?」
私達の僅かな隙間を鋭い閃光が割って入った。
そして空が、怒りに満ち溢れているかのように大声で叫んだ。
「きゃっっ!!」
「大丈夫だよ。俺が居るから」
そう言って彼は雷鳴が鳴り止むまで、腕の中に私を隠した。
「とりあえず、出よう」
彼はハンドルを握り雷雨で荒れた砂浜でタイヤを激しく回転させると、今にも襲いかかって来そうな高波に別れを告げた。
ようやく国道の直線道路に出て落ち着いたところで、私は先ほど彼が言いかけた気になることを聞いた。
「ねぇ、さっき言ってた。私に伝えたい大切なことって何??」
「......人事異動のことだよ。上層部の意向でね。二課に配属された時点で決まってたんだ」
私は、おぼつかない足取りで彼の背中を追いかけた。
彼は私を気にして。時々、後ろを振り返っては立ち止まり、日差しがまぶしそうな顔で笑顔を見せた。
二人で波打ち際までたどり着いた時、強い追い風が吹いて私の髪が彼の横顔に触れそうになった。
それを合図として、彼は私の方に振り向き優しい眼差しを向けた......。
「俺、牧村さんの保護者になります。......あ、保護者なのに敬語はおかしいね。......沙綾ちゃん」
「保護者......!?」
満面の笑みを浮かべる彼と、ただひたすら瞬きを繰り返す私。
「守らせて、沙綾ちゃんのこと」
この男(ひと)は、どこまで私の胸を”キュゥッ”と鳴かせ続けるんだろう......。
「あの......」
「沙綾ちゃんが泣き虫だってこと、俺よく分かったから。だから、守ってあげないと。......俺が君を守る」
穏やかな笑顔の印象が強い彼の真剣な眼差しは稲妻のように私の胸を貫いて、私は彼の瞳から目をそらせない。
追い風に煽れるように一歩一歩、彼と私の距離が近づいていく ーー。
その時。眩しい閃光が海岸を走った。直後に怒号の如く雷鳴が大空に響き渡り、途端に青空は顔色を変えた。
「きゃっっ!!」
「沙綾ちゃん、車まで走れる!?俺のジャケット、傘代わりにしてっ!」
戸川君は、自分のジャケットを脱いで私に被せると、更にむき出しの腕で私を包んで、車まで一緒に走った。
「春の天候は変わりやすいからね......」
彼は、すっかり濡れた自分の髪も体もおかまいなしに、私を気遣ってくれた。
「沙綾ちゃんが風邪ひいたら大変だ」
私は、濡れた彼の髪を自分のハンカチで拭いていた。そして、その手は彼の頬へと ーー。
すると、彼の忙しない動きが止まった。
ーー 私達は眼差しで気持ちを確かめ合い、唇がゆっくりと近づいていった......。
まるで魂が抜けたような瞳をした彼の唇が動いた。
「俺、沙綾ちゃんに伝えたい、大切なことがあるんだ......」
「え......っ?」
私達の僅かな隙間を鋭い閃光が割って入った。
そして空が、怒りに満ち溢れているかのように大声で叫んだ。
「きゃっっ!!」
「大丈夫だよ。俺が居るから」
そう言って彼は雷鳴が鳴り止むまで、腕の中に私を隠した。
「とりあえず、出よう」
彼はハンドルを握り雷雨で荒れた砂浜でタイヤを激しく回転させると、今にも襲いかかって来そうな高波に別れを告げた。
ようやく国道の直線道路に出て落ち着いたところで、私は先ほど彼が言いかけた気になることを聞いた。
「ねぇ、さっき言ってた。私に伝えたい大切なことって何??」
「......人事異動のことだよ。上層部の意向でね。二課に配属された時点で決まってたんだ」