拘束時間　　　〜 追憶の絆 〜
『二人暮らし..｡.:*･♡♡･*:.｡.. 』
　ーー　２０２６年　５月１１日　ーー


　彼女に初めてキスをした時、小さな体で懸命につま先立ちをする姿が初々しくて......。

　俺は、そんな彼女が愛しくてたまらなかった。

　彼女にとって俺とのキスは、正真正銘のファーストキスだった。

　そんな大切なものを俺に捧げてくれた彼女とキスを交わしながら、いつかこれが本当の誓いのキスに変わることを願っていた。

　純白のウエディングドレスにも負けない。穢れのない彼女......。

　俺は夢見ていた。

　いつか彼女との未来が紡がれることを。

　
　「社長、明日の出立時は副社長はもちろんのこと、専務、常務、役員一同でお見送り致します」

　「心遣い、ありがたく思うが......副社長並びに役員達は、仕事を優先してくれ。まずは社に貢献することを頼む」

　いくら外見の地位が向上しても、内側の支えがなければいつか崩れ去ってゆく。

　俺は、この異国の地で数年間。彼女と暮らした日々を糧としてこれまでやってきた。

　その糧も、いよいよ尽きる時......。


　明日の早朝、俺はカナダを発つ。

　異国の空を渡って彼女がいる母国の地まで帰ろう。

　そして今度こそ。本当の誓いのキスを彼女と叶えよう　ーー。

　「沙綾、必ず君を迎えに行く......」
　
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