拘束時間 〜 追憶の絆 〜
『ユウト』 ーー。
その名前を聞いた時、私は胸が痛んだ。
ただ名前が同じというだけで初めて会った人に、こんな感情を抱いてしまうなんて......。
課の朝礼時に戸川さんは社員の前に出て行き挨拶をした。
”戸川優斗 22歳”私と同期で、『優斗君』と同じ名前 ーー。
もしかして戸川さんは私の初恋の彼なのでは......??
私の中に、妄想ともいうべき、ありえない発想が浮かんだ。
ーー 戸川さんと私は同じ先輩について研修を行うことになった。
「牧村さんは、元々この土地の方ですか?」
先輩と戸川さんと私の三人で昼休憩を取っていた時に他愛ない会話の中、何気なく戸川さんが聞いてきた。
「あ、いえ。私は......」
私がこの土地の出身ではないこと、大学進学をきっかけにこの土地に来たことを話すと、
「そうなんですね。俺も出身は......」
彼の話を聞いた時、私は耳を疑った。
まさか、戸川さんが優斗君と同じ出身地だなんて!
優斗君は小学校二年生の時に私の地元に引っ越してきた。
未だに初恋が忘れられない私は、先ほど自分自身が抱いた妄想に飲み込まれそうになった。
別人だとわかっていても、戸川さんを『優斗君』と重ねてしまう。名前も年齢も出身地も一緒......。
「どうしました?」
私が、あまりにも驚いた顔をしたので戸川さんは不思議そうに言った。
「あ、いえ、何でもないです......。すみません」
戸川さんは、怪訝な顔をして私の様子をうかがっている。そして、探るように私に言ってきた。
「俺が地元の話をした時に、あまりにも驚いた表情をされたので。何かよっぽど思い入れがあるのかなと思って......」
そう。戸川さんは私の初恋の彼と......、違う。もう会えない、今でも好きな人と戸川さんは同じ名前で出身地まで一緒 ーー。
でも、優斗君が亡くなっていることを話したら、きっと戸川さんは気分を害してしまう。
私はワザと少しおどけて、先輩と戸川さんの前で優斗君の話をした。
「戸川さん、私の初恋の人と同じ名前で......。それで地元まで一緒だったから、すごくびっくりしました〜!」
適当に他の話をすることもできたのに。どうして優斗君のことを正直に話したのか、その時は自分でもよくわからなかった。けど、今思えば、やっぱり私は無意識に戸川さんと『優斗君』を重ねてしまって、きっと戸川さんに私の気持ちを知ってもらいたかったから......。
そう思うと、戸川さんに対して私は、すごく恥ずかしい。
初対面の男性に、ましてやビジネスシーンでこんなにもプライベートな感情をさらけ出してしまうなんて......。
一体、戸川さんは優斗君の話を聞いた時どう思ったんだろう?
でも、そんなこと戸川さんは、きっともう忘れてる......。
「牧村さん......っ!」
退社後の帰宅途中。若い男性の声で名前を呼ばれて振り返ると、私の斜め後ろに戸川さんが立っていた。
ーー 彼はどこか清々しい顔をしていた。
「戸川さん。」
「お疲れ様です。今日は、ありがとうございました。色々教えてもらって......」
「そんなっ、とんでもないです。私の方こそ、就業前の準備をしてもらって......」
私達はお互いにお礼を言い合い、そして戸川さんは私に言った。
「牧村さん、夕食はいつもどうしてます?あの、もし良かったら、これから一緒にどうですか?他に予定が無ければですけど......」
その名前を聞いた時、私は胸が痛んだ。
ただ名前が同じというだけで初めて会った人に、こんな感情を抱いてしまうなんて......。
課の朝礼時に戸川さんは社員の前に出て行き挨拶をした。
”戸川優斗 22歳”私と同期で、『優斗君』と同じ名前 ーー。
もしかして戸川さんは私の初恋の彼なのでは......??
私の中に、妄想ともいうべき、ありえない発想が浮かんだ。
ーー 戸川さんと私は同じ先輩について研修を行うことになった。
「牧村さんは、元々この土地の方ですか?」
先輩と戸川さんと私の三人で昼休憩を取っていた時に他愛ない会話の中、何気なく戸川さんが聞いてきた。
「あ、いえ。私は......」
私がこの土地の出身ではないこと、大学進学をきっかけにこの土地に来たことを話すと、
「そうなんですね。俺も出身は......」
彼の話を聞いた時、私は耳を疑った。
まさか、戸川さんが優斗君と同じ出身地だなんて!
優斗君は小学校二年生の時に私の地元に引っ越してきた。
未だに初恋が忘れられない私は、先ほど自分自身が抱いた妄想に飲み込まれそうになった。
別人だとわかっていても、戸川さんを『優斗君』と重ねてしまう。名前も年齢も出身地も一緒......。
「どうしました?」
私が、あまりにも驚いた顔をしたので戸川さんは不思議そうに言った。
「あ、いえ、何でもないです......。すみません」
戸川さんは、怪訝な顔をして私の様子をうかがっている。そして、探るように私に言ってきた。
「俺が地元の話をした時に、あまりにも驚いた表情をされたので。何かよっぽど思い入れがあるのかなと思って......」
そう。戸川さんは私の初恋の彼と......、違う。もう会えない、今でも好きな人と戸川さんは同じ名前で出身地まで一緒 ーー。
でも、優斗君が亡くなっていることを話したら、きっと戸川さんは気分を害してしまう。
私はワザと少しおどけて、先輩と戸川さんの前で優斗君の話をした。
「戸川さん、私の初恋の人と同じ名前で......。それで地元まで一緒だったから、すごくびっくりしました〜!」
適当に他の話をすることもできたのに。どうして優斗君のことを正直に話したのか、その時は自分でもよくわからなかった。けど、今思えば、やっぱり私は無意識に戸川さんと『優斗君』を重ねてしまって、きっと戸川さんに私の気持ちを知ってもらいたかったから......。
そう思うと、戸川さんに対して私は、すごく恥ずかしい。
初対面の男性に、ましてやビジネスシーンでこんなにもプライベートな感情をさらけ出してしまうなんて......。
一体、戸川さんは優斗君の話を聞いた時どう思ったんだろう?
でも、そんなこと戸川さんは、きっともう忘れてる......。
「牧村さん......っ!」
退社後の帰宅途中。若い男性の声で名前を呼ばれて振り返ると、私の斜め後ろに戸川さんが立っていた。
ーー 彼はどこか清々しい顔をしていた。
「戸川さん。」
「お疲れ様です。今日は、ありがとうございました。色々教えてもらって......」
「そんなっ、とんでもないです。私の方こそ、就業前の準備をしてもらって......」
私達はお互いにお礼を言い合い、そして戸川さんは私に言った。
「牧村さん、夕食はいつもどうしてます?あの、もし良かったら、これから一緒にどうですか?他に予定が無ければですけど......」