拘束時間   〜 追憶の絆 〜
 私は覚悟を決めるしかなかった。

 浦田さんに知られてしまった以上、社内中の噂になるのは必須。

 そして、社内中の女子社員の羨望と嫉妬の視線が私へ注がれるかと思うと、本当に神経が擦り減る......。

 もちろん。自分の彼氏が社内一のイケメンでモテることに鼻が高いのは確か、でも、それ以上に。その男(ひと)の彼女が、時別に美人なわけでもなく何のスペックも持ち合わせていない、平凡な新米OLであることに優斗の評判が落ちはしないかと気がかりだ。

 複雑な心境を抱えて、私は難しい顔をしていたのだろうか?優斗は私の手を引いてこう言った。

 「俺達のこと。たとえ社内中の噂になったとしても、時期がちょっと早かっただけだよ。どっちにしろ結婚したら、みんなが知ることになるんだから」
 
 「けっ、結婚!?」

 彼の口から出た”結婚”という言葉に、私は思わず目をしばたたかせた。

 付き合ってる男性が結婚を意識してくれることは。本来、女にとっては心底嬉しいことだけど、あまりに早い話の流れに私は正直なところ気持ちが追いつかない。

 確かに。真摯に想ってくれる彼の気持ちは嬉しいけれど私は、まだ彼のことで知らないことがありすぎる......。

 彼と一緒に暮らしていながらも私は今まで彼の生い立ちなどを詳しく聞いたことはなかった。

 「とりあえず飯食おう。この時間じゃ、帰って作ると何時になるかわかんないから、今日は外で良い?」

 これ以上、結婚の話を掘り下げても今は進展がないと思ったのだろうか??

 彼は結婚の話から晩ごはんの話へ即座に話題を切り替えた。
 

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