拘束時間   〜 追憶の絆 〜
 私に”キライ”と言われた優斗は、大げさなリアクションをした。

 そして、そのあとに”大好き”と言ってくれて......。

 そんな風にして、彼は私を甘えさせてくれた ーー。
 
 「冗談だよっ、さっきのお返しっ」

 「じゃあ、沙綾も俺のこと好き?好きなら、......キスしていい?」

 いくら会社の外に出たとは言え、まだ正面入り口は目の前だ。

 「優斗っっ、こんなところで何言ってるのっっ!恥ずかしいよ......」

 私は今にも顔から火が出そう。それでも、ワザと。優斗は、より艶っぽく言う。

 「今朝、仕事終わったらキスの続きしようって言ったよね......」

 都会の夜は眠らず。どこもかしこもネオンで明るく照らされているけど、それでも顔を近づけないと彼が今どんな表情をしているかは容易に分からない。
 
 宵闇の中で繋がれた指先を彼に指の腹で撫でられながら。私は、ねっとりと鼓膜を刺激する声色に犯されていた.....。

 「家に着くまで待てない.......」

 狭い通路を走る車が私達を追い越して行きドライバーの視線が遠ざかった、その時。

 「んっっ」

 「......んっ」

 「ちゃんと受け入れてくれたね。......かわいい」

 抗うことなくキスを受け入れた私に優斗は満足そう。

 「もうっ、暗いからって外でキスするなんて恥ずかしいよ......っ」

 「ごめん、ごめん。でも、俺が唇を離したら、沙綾は”もっと”って、顔したよ?」

 私は彼と付き合い出してから。自分が女の子から、どんどん女に変わっていくのを実感していた......。

 
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