拘束時間   〜 追憶の絆 〜
 彼に愛されて。私も少しは垢抜けてきただろうか?

 今から行くレストランは五つ星の高級フレンチ。

 優斗はそこの常連客で上客 ーー。

 レストランのスタッフから見て、彼と私は釣り合いが取れているだろうか?

 ......恋人同士に見えるだろうか?

 私はそんな懸念をいだきながら、彼に連れられて五つ星レストランへと向かった。

 
 雑然とした繁華街から少し離れた、住宅街に程近い通りの一角に佇むその店は。アールヌーボー調の黒い鉄格子の門が、なんとも重厚な雰囲気を醸し出しており、ここが客層を選ぶ店であることを物語っている。

 若干22歳の彼は、そんな厳かな外観を諸共せずに。私の手をしっかりと繋いで店の入り口までの数m、芝生の上に敷かれた石畳を歩いていく。

 「これは、戸川様。ようこそいらっしゃいました.....!どうぞこちらへ」

 前回来店した時と同様に。今回も店のオーナーらしき人が自ら扉を開けて丁重に出迎えてくれた。

 やっぱり、優斗は。”本物のお坊ちゃま”なんだなぁ。

 私は改めてそう思った。

 たとえ、彼の生い立ちについて何も知らなくても......。

 
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