拘束時間   〜 追憶の絆 〜
 
 俺は今日をもって、孤独な白夜に別れを告げる。

 今は、明日からの新たな門出を祝う”送別会”という名のレセプションの最中。

 今、俺が居るカナダは、午後7時。

 日本との時差17時間......。

 今、彼女が居る日本は正午。

 同じ会社の同期として彼女と共に働いていた時のことを思い出す。

 俺はいつも、昼休みに彼女へLINEを送り。そして、社食で彼女と一緒に昼食を摂り、他愛のない会話を交わす。

 クルクルと表情を変えながら。愛らしい笑顔と、きらめく眼差しを俺に向けて楽しそうに話す彼女 ーー。

 仕事でどんなに疲弊していても。そのひと時があれば、俺はまた午後から奮起できた。

 そうして彼女に支えられながら、ここまで上り詰めることができた。

 今は、もう。あの会社に俺は居ない。

 そして、彼女も居ない。

 今、彼女は一体どこにいるのだろう.......?

 消息も分からない女性を探し出してプロポーズしようだなんて、まるでおとぎ話だ。

 そうだ。なぜなら彼女は、ずっと俺のお姫様だから......。

 「好きなんだ、沙綾のことが。今でも......愛してる」

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