拘束時間   〜 追憶の絆 〜
「すいません......」
 
「いえ、良かった泣き止んでくれて......」

戸川さんは、未だ意気消沈している私を気遣い。落ち着いた雰囲気のカフェに連れて行ってくれた。

「何も話さなくても。俺、居ますから。今、牧村さんを一人にしちゃいけないような気がします」
 
どうして。戸川さんはこんなに、私に優しくしてくれるんだろう。
 
そして、そんな戸川さんに。私はものすごく安心感を覚えてる......。

「あの......。戸川さん、私の初恋の話聞いてくれますか......?」
 
「その話、俺も聞きたいです......」

戸川さんは記録の間口を限界まで広げて、懸命に優斗くんの話を記憶に残そうとしているように見えた。

私の話を黙って真摯に聞いてくれる戸川さんに対して私は、ただならぬ予感を感じていた。

「好きなんですね.....。今でも、彼のこと」
 
「......はい」

知ってもらいたかった戸川さんに、私の気持ち。

「牧村さんの気持ち知れて良かったです。一人で抱えてるより、誰かに打ち明けると少し楽になりませんか......?俺も半分、持ちます。牧村さんの気持ち」
 
「......戸川さんはどうして、そんなに優しいんですか?」
 
「牧村さんには、優しくしたいんです」
 
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