拘束時間   〜 追憶の絆 〜
 「外、晴れてるね......」

 カーテンの隙間からベッドルームに差し込んだ太陽の光は、休日の甘い時間に働きかけて、私達を外の世界へ連れ出す案内役となる。

 「せっかく晴れてるから、どこか出かけようか」

 「うん。どこ連れてってくれるの?」

 「どこ行きたい?」
 
 太陽が、もうすぐ空の一番高いところまで昇ろうとしていることに気がついた私達は。ようやくベッドから身体を起こして、身支度を整えた。

 優斗は車のキーを片手に。先週、更新した新しい免許証を私の前にかざした。

 「ほらっ、緑だった免許証が青になったよ。そして5年経ったら。ゴールドになって、車はファミリーカーに変わってる......」

 彼と過ごす日々は、穏やかで安らぎに満ちていて。こんな時間がずっと続いてほしい。

 私は彼が語った未来予想図に笑顔で頷いた.....。

 「早く5年経たないかな」

 「どうして?」

 私は、彼が”早く、沙綾のウェディングドレス姿が見たいから。”なんて、言ってくれるのかと、おこがましくも思ったりした。

 「免許証の写真、破滅的だな。」

 なんだ。期待した自分が恥ずかしい。

 『戸川 優斗』と記載された免許証に無表情で写ってる彼。

 「十分かっこいいよっ!そんなこと言ったら、他の人はどうなるの!?」

 「ありがとう。......でも、それは沙綾のリップサービスだ。はい、俺からも沙綾にリップサービス」

 ”チュッ”という彼からのフレンチキスの音は、庭先で遊ぶ小鳥の”さえずり”にも似ていた。

 「今、スズメが鳴いたよ」

 「ん?」

 彼は最初、私が言っていることの意味が分からなかったようだけど。私の照れた顔を見て気がつき、それから甘い声で囁いた。
 
 「どんな鳴き声だった?俺に教えて......」
 
 そう言って彼は、挑発的な色香を仕掛けてきた。優斗の端正な顔がどんどん私の瞳に近づいてきて......。私は、いとも簡単に彼に堕ちてしまった。

 「......こんなっ」

 ”チュッ”という軽いリップ音が再びベッドルームにこだました。

 初めてだった。私から彼にキスをしたのは......。

< 54 / 136 >

この作品をシェア

pagetop