拘束時間   〜 追憶の絆 〜
”沙綾” ーー。

今、私を抱きしめてくれているのは、”優斗君”なんだ......。

子供の頃の優斗君はツヤツヤで真っ黒な髪の毛をしていて、太陽の光を浴びると髪に天使の輪がかかった。
 
今、私を抱きしめている彼は、薄茶色の髪の毛をしていて長めの前髪を斜めに流している。襟足も少し長め......。

少年時代の面影は微塵も感じられなくても。私に与える感情は、幼い頃に抱いた優斗君への恋心そのもの ーー。
 
私をこんなに幸せな気持ちにさせてくれる人は優斗君しかいない。
 
だから、どんなに姿形は変わっても。私は彼だと分かる。

私達が離れ離れになっていた12年間。その間、優斗君は、どんな風に過ごしていたのだろう??

彼の表情、声、仕草、......体。今、私に見える優斗君の全てが、彼の今までの人生の積み重ねの上に成り立っていると思うと、私の心と体......私の全てで優斗君を受け止めたい ーー。

「キスしたら。俺、もう止められなくなるけど......それでも、いいの......?」

ーー 私は、深く、ゆっくり頷いた。

「んっ......っ」
 
「......んっっ」

私の初めてのキス。私達の初めてのキス......。

「沙綾......」

名前を呼ばれただけで、私は今までに味わったことのない”おもはゆい”感覚に捉われる。
 
私にこんな感情が眠っていたなんて......。私にこんな感覚が備わっていたなんて......。

大人になった彼。私も大人になった。

そして、大人になった私達は ーー。
 
「あ......っっ、ん......っ」

優斗君の唇が私の肌の上を滑り出した。
 
私は、彼の温かい唇を執拗に求める自分の肌に羞恥を覚えた。
 
そして、自ずと込み上げる甘い声を殺してしまう......。

「ダメだよ。ちゃんと声聞かせて......。大人になったってこと、俺に教えて......」
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