拘束時間   〜 追憶の絆 〜
彼の言葉に導かれて次第に素直になってゆく私。

"触れ合いたい”もっと、”彼を感じたい”

「ぁっ......ぁんっ。」
 
「かわいい声......」

首筋、鎖骨、胸元、背中、太腿......。
 
彼は、潤んだ舌先で私の体をゆっくりと優しく溶かしていった ーー。

「沙綾は蜂蜜みたいに甘くて、つややかで、トロンとしてる......」
 
「優斗君......」
 
「なに......?」

堪らず私が名前を呼ぶと彼は、ためらわず返事をしてくれた。
 
私が、ずっと好きだった男(ひと)。今、私はその男(ひと)の腕の中に居る ーー。

彼の唇が私の肌に触れる度に傷がひとつ消えて、彼の無数のキスで私の傷が完全に癒された時、今までの理不尽な事実がすべて肯定された。
 
悲しい過去も、寂しい記憶も。
 
優斗君の優しいキスで全て、この日を迎えるための試練だったと思える ーー。

 
私達は熱く抱き合って頬を寄せた。
 
優斗君は私に頬ずりをして、それから髪を優しく撫でてくれた。
 
この時。私は初めての不安や恐怖心よりも、身も心も彼と一つになる事を願っていた。

「俺に、しっかり掴まっててね......。大丈夫だよ......」
 
「......っ!!」

ーー 私達は、深く繋がった。 

彼は全身で私を守るように抱きしめて、打ち寄せる波のような動作をゆっくりと繰り返している。
 
私は、時々”グッ”と、体内の奥深くにまで届く衝動を感じながら、優斗君の背中に”ギュッ”と掴まっていた。

「んっっ......!」
 
「大丈夫?辛くない.......??」
 
「だい......じょうぶ......っ」
 
「辛かったら我慢しないでね......っ。俺、好きな女(ひと)を乱暴に扱う事は、したくないから.......!」
 
真摯に気遣ってくれる彼に、愛しさが込み上げる。すると不思議な事に、初めて経験する行為だというに痛みを全く感じない。
 
ただ一重に。私の中は彼への愛しさだけで満たされていた......。


結ばれた余韻が残る、熱く火照った体をベッドに横たえて私達は微笑んだ。

「これからずっと。俺は、沙綾のそばにいるから安心して......」 

彼は私を優しく抱き寄せて言った。
 
「沙綾、好きだよ......」
 

ーー 今は一体、何時だろう?

私は彼の腕に抱かれて眠りについたはず......。
 
それなのに、隣に彼が居ない。

 
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