拘束時間   〜 追憶の絆 〜
 ”ずっと、そばにいる”って言ったのに......。
 
 私は、おぼろげな意識の中で彼を探した。

 「よかった......っ。いなくなっちゃったのかと思った。ずっと、そばにいるって約束してくれたもんね......」

 優斗君はベッドの端で腕を組み、その上に顔を乗せて私を見つめていた。

 彼は、いつベッドから起き上がったんだろう?全然分からなかった。
 
 私は、彼がどうしてそんな場所にいるのか不思議に思ったが、ひとまず彼が傍に居ることに安心した。

 しかし、気のせいだろうか??私を見つめる彼の笑顔がもの悲しく見えるのは......。
 
 その様子に。私は突然、説明のつかない不安が込み上げた。
 
 そして、私は優斗君の存在を確かめたくて、まるで生まれたての赤ん坊が母親を求めるように彼の指先を握った。

 本物だ......。皮膚の感触も、隆起した関節も、大きくて長い形の爪も。
 
 確かに。優斗君は、ここにいる。
 

 ーー 瞼を覆う白い光に気がついて、私は目を覚ました。

 その途端に、昨夜の出来事が鮮明に瞼の裏に映し出された。

 温かくて、愛おしくて、少し恥ずかしくて......。

 何よりも。深い安堵感に包まれた。

 その記憶のままに、私は寝ぼけ眼に映った大好きな男(ひと)の広い背中に見惚れていた。

 優斗君、私より随分早く起きたのかなぁ......?

 着替えて髪もきちんとして、出掛ける格好をしてる。

 背中で視線を感じ取った彼が振り返り、私に穏やかな笑顔を向けた ーー。

 「おはようございます。牧村さん」

 敬語?それに、”牧村さん”......?

 「気分はどうですか?」
 
 私は、昨夜の彼との変貌ぶりに混乱しつつも、とっさに答えた。

 「はっ、はい。大丈夫です......」

 「よかった......っ!安心しました」
 
 彼は、にっこりと微笑んで。昨夜、私を抱いた事など微塵も記憶に無いような雰囲気。

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