拘束時間   〜 追憶の絆 〜
 頑なに、私へ。この部屋に止まるように促す彼。

 私は無言で、彼の忠告を無視するようにスマホを持って。それから最低限の荷物をまとめようと、リビングを出ようとした。

 すると、彼の大きな手が私の手首を力強く掴んだ。

 「ダメだ。沙綾は、ここに居て」

 これほど強引な態度をとる彼は初めて。

 「女の子が、こんな夜中に一人で出て行ったら危ない。......俺が出て行く」

 今度は彼が、無言でリビングを出て行こうとしていた。

 ーー 彼の優しさに温まる心と彼と決別するという冷たい決意の間で私は、どちらにも行けずに、うろたえていた。

 私は、彼を止めることもできず。冷静に行動していく彼の背中を目で追うのが精一杯だった。

 「これだけは約束してほしい。今日はもう、どこにも行かないでここに居て」

 一通り荷物をまとめた彼は私にそう言い。去り際に、戸惑いながらも差し伸べた指先で私の髪を一度だけ撫でた。

 最後にフッと微かに見せた笑顔が寂しすぎて、私は彼にすがりつきたくなった......。

 
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