真心の愛を君に......。 〜 運命の恋は結婚相談所で ~
どうしてこんなに短時間の間に彼女を好きになったのだろう?

初めて会った時に一時間、初めてのデートを含めても三分の一日しか彼女と過ごしていない。

その間交わした会話の内容なども、趣味の話や休日の過ごし方など当たり障りのないもの......。

まだまだお互いの深い部分を知るには不十分すぎる内容だった。

だけど。そんな会話の中で、俺は彼女の笑顔をたくさん見ることが出来た。

俺の話を笑顔で聞いてくれる彼女。

他愛ない会話で、二人で笑い合ったこと。

俺に笑顔で話をしてくれる彼女。

彼女の笑顔は透明な感じがした。

彼女の笑顔をずっと見ていたい。

彼女の笑顔が曇らないようにずっと守っていきたい。

これが庇護欲というものなのだろうか?

男には本能的に備わっているものらしい。

俺の男性的な部分が彼女を一人の女性として意識した。

これ以上ないくらい、恋に落ちるには十分過ぎる理由だ。


彼女を好きになって花火大会のデートに誘ってから、スマホを確認するのが日課になった。

いつまでの既読にならないLINEを見て思った。

彼女からの連絡は無くても。俺が居るこの街のどこかに彼女も居るんだ......。

どうして彼女と俺は今まで出会わなかったんだろう?

いや、もしかして。彼女と俺は、もうずっと前に街のどこかですれ違っていたかもしれない。

出勤前に立ち寄ったコンビニ、休日に出かけたレコードショップ、流行りのダイニングバー.......。

その時は、お互いの存在に気がつくこと無く時間が過ぎ去った。きっと、時期じゃなかった。


過去の全ての経験によって今の俺がつくられている。

それは彼女も、人は皆そうだろう。

昔の俺のままだったのなら、果たして彼女に恋をしていただろうか?

清廉な彼女の魅力に気が付けるほど、心が成長していただろうか?

早いも遅いもなく。

今、出会ったことに意味があるんだ。

このまま彼女との縁を見送りたくはない。

既読にならないLINEを眺めて三日目の夜、俺は彼女へ電話をした。
< 13 / 315 >

この作品をシェア

pagetop