真心の愛を君に......。 〜 運命の恋は結婚相談所で ~
案の定、私はジークからの夕食の誘いを断ることにした。

頭ではジークを受け入れなければ、いけないと分かっている。でも、それが出来ないのは、彼から伝わって来る広務さんへの強い嫌悪感に憤りを感じているからだ。
 
そういう風に間違った感情を持ってしまうのは、理性ではどうすることも出来ない恋愛感情が私を広務さんに固執させているから。

自分がバカなことを考えているのは十二分に承知してる......。

正しい道を歩ませようとしてくれているのはジークだーー。

でも、私の恋心が、せめてもう少しだけ広務さんのものでいたいと訴えかけてくるから......。

ジークへの断りのLINEを送るために、頭の中でごちゃごちゃと屁理屈をごねていると同様に顔つきも難しくなって眉間にしわが寄っていた。

切々とした面持ちで黙々とスマホをタップし続ける私の姿をきっと彼氏へのLINEだと思った実加は、今日も絶好調のハイテンションで、すかさず茶々を入れてくる。

「何〜!? 昼休みも彼とLINE? 相変わらずラブラブだねーっ! 今日もデートッ!?」

それこそ、只今同じ課の横澤主任とラブラブ社内恋愛中、24時間365日がデート日和の実加。彼女は自分と同様に当然私も彼氏とうまく行っていると信じて疑わない。

それは、もちろん実加には広務さんと付き合うことになったこと、彼の部屋に行ったことなど恋の進行状況を報告していたからだけど。ジークとの一件以来、実加と私の恋模様は反転して、そのことに後ろめたさを感じている私は恋の話をすることが少なくなっていた。

事情を知らずに前のめりで恋の形勢をうかがう実加を一蹴するように。私は雲行きを臭わせるつもりで死人のように無表情な顔で地を這うような低い声を出した。      

「違うよ......。彼にLINEしたんじゃないよ......」

「そうなの? どうしたの? なんか、あったの?」

これは重症だ!という感じで、持ち前のお祭り気質を封印した実加は、かつて見たこともない深刻な表情で心配してくれた。

「大丈夫......。疲れてるだけだよ......。ありがとう」

「あたしで良かったら何でも言って。ねっ、今日仕事終わったら、久しぶりにゴハン食べに行かない?」

これは、ありがたい。

ジークの誘いも断ったし、食欲がないからどうせ一人じゃロクなもの食べないだろうし、せっかく実加が心配してゴハンに誘ってくれてるんだから。ここは思い切って、肉バルのジャンボステーキにかぶりつきながらワイン片手に”ぐでんぐでん”で、実加に泣きつこうか。

あれ? でも、実加。今日は横澤さんとデートしないのかな?

「実加は、夜の予定は大丈夫なの?」

「大丈夫、大丈夫っ!彼、今日は残業確定なの。てか、あたしの心配はいいのっ! 優花の死人顔を治す方が優先!」

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