真心の愛を君に......。 〜 運命の恋は結婚相談所で ~
彼の言葉を受けて私は直感的に昨日カフェで広務さんと一緒にいた、あの女性のことが頭に浮かんだ。

凡庸な私とは比べものにならない、洗練された華やかさを纏った美人だった。彼女こそ、きっと誰が見ても広務さんのパートナーにふさわしい......。

彼女が誰なのか、広務さんと、どういう関係なのかは分からない。

だけど、どうしても絶望的な答えしか導き出せないのは広務さんが彼女へ、あたかも恋人に向けるような笑顔を見せていたこと、そして、それ以上にジークが語った広務さんの過去の恋愛話が胸に強烈に突き刺さっているからだ。

”色々な女と付き合ってた。しかも、同時進行で......。”

カフェで目撃した悪夢のような場面と、ジークの決定的な台詞が頭の中で混ざり合い、動悸で騒めく胸を容赦なく掻き乱していく。

夕陽が落ちて時間が増すごとに青く染まっていく空は、実際の気温よりもずっと空気を冷たく感じさせて、寒々しい思いに襲われている私は少しでも温もりが欲しくて、ぎゅっと肩を竦めると両腕をクロスさせて自分自身を抱きしめた。

「寒い? とりあえず、俺の車に行こう」

私の身震いする仕草を見た広務さんは、すぐさま対面していた位置からずれて私の右隣に来ると、そっと腕をのばして私の背中に当て、冷たい空気を遮断してくれた。

いつだって彼は紳士的な優しさを忘れない。それは、どの女性に対しても、もちろんそうなのだろう......。

しかし、あの女性に対しては特段優しいのだろうか?二人はカフェを出た後、どう過ごしたのだろうか?

いずれにせよ、今日、彼の口から答えを聞けるはずだ。せめて今は私のためだけに向けられている彼の温もりと優しさを静かに感じていたい......。

「日野さんの恋人が広務だったなんて、本当に世間は狭いよな」

広務さんの私に対する、親密な振る舞いを目にした横澤さんが、斜め後ろから声をかけてきた。

「秀くん。優花の彼と、お知り合いなの?」

「うん、大学時代の友達」

「そうなんだっ!」

......知らなかった。

彼は私には何も教えてくれなかった......。

深い疎外感に苛まれて、私は寂しく俯いた。

「これからデートですかっ!?」

広務さんと私の間に人知れず漂う、不穏な空気を感知することなく、実加は広務さんへ明朗に話し続けた。

「あの〜っ、良かったら、これから4人で軽く飲みに行きませんか?? あっ、もちろん軽くですっ! 優花良い!? 秀くんも良いよね!?」

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