真心の愛を君に......。 〜 運命の恋は結婚相談所で ~
社内は冷房が効いているので、猛暑に苦しめられることはない。

この涼やかな空間でなら、彼への灼熱のラブメッセージを心置きなく考えられる。

私は意気揚々と自分の課のフロアへと足を踏み入れた。

誰もいないオフィスは、なんて清々しいんだ。

私は大きく背伸びしたい気分になり、両腕を天井に突き出そうとした。その時、

「おはようございます」

落ち着いた男の人の声が聞こえて私はハッとなり、途中まで振り上げていた両腕を慌てて下に降ろし、声が聞こえた方向に焦点を合わせた。

するとそこには。一際資料やデータが積み上げられた机に座り、紺色のリクルートスーツをカチッと着こなした几帳面そうな男性がこちらを見ていた。

営業の横澤さんだ。

やだ、もしかしてさっきの恥ずかしいポーズ見られた?

「おっ、おはようございます」

若干、どもりつつ挨拶をした私に横澤さんは表情ひとつ変えない。

「日野さん、今日早いですね。何か急ぎの仕事でもあるんですか?」

急ぎの仕事?無い無い。

「いえ、今日はいつもより早い電車に乗れたので......」

「ああ、そうなんですね」

横澤さんは、この課の実質ナンバー2。次期課長候補。

私は仕事をしている横澤さんの邪魔にならないようにと、静かに自分の机に向かった。

いくら横澤さんが集中して仕事をしているとはいえ、二人きりはなんとなく気まずいなーと思っていると、突如オフィスにカツカツという女性の足音が響いた。

「あれ?優花......。おはよう。今日、早いね」

同期の実加は7センチヒールのパンプスを軽快に鳴らして出社してきた。

「おはよう。今日、一本早い電車で来たの」

実加は「そっか」と言って、私の言葉をさらりと聞き流したかと思えば、視線をパッと横澤さんに切り替えた。

「おはよう......ございます」

「おはよう、ございます......」

何?この、ぎこちない二人のやりとり。

まるで、”わざと敬語使いました。”みたいな。

何より、私が邪魔者っぽいこの空気は......。

前から実加が横澤さんに片思いをしているのは聞いていたけど......。
 
まさか!?ついに!?この二人!! 

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