真心の愛を君に......。 〜 運命の恋は結婚相談所で ~
シュンと消えかかるように点滅を繰り返す心許ない街灯の下。広務さんは突然、堰を切ったように、それまで自制してきた感情を一気に吐き出した。その様子は、なりふり構わない、という切々とした気迫に満ちていた。

カフェで一緒にいた女性との関係、横澤さんが彼の大学時代の恋愛を語らなかった理由、ジークが語った彼の過去の恋愛話......。

私の頭をどうにも、もたげていた、それら全ての問題を問答無用で消し去る程、彼自身に嘘偽りがないと思えた。

今、この目に映る、この男(ひと)は間違いなく、私が最も知る愛しい恋人だ......。

明暗が忙しない蛍光灯の動きに微動だにせず、真っ直ぐに私を映す彼の瞳に胸を焦がしながら、心の真ん中で熱い想いをしっかりと受け止めた。

キュンッと溢れ出してくる気持ちを言葉に託すのなら、

彼が好き。

傍にいたい。

......今すぐ触れ合いたい。

なのに。熱い想いに突き動かされて彼を求める眼差しを遮るように、もう一人の私が言う。

私の身体は、もう自分だけのものではない。

ジークの想いに応えて、母親としての人生を選ぶべきだ。

広務さんの想いに応えては、いけないーー。

自業自得の不埒な罪に足元を掴まれて、彼のもとへと踏み出せない。悔しくて、苦しくて彼に助けを求めたくても、私にそんな資格はない。

緊迫したまま暫く見つめあっていると、彼が静かに口を開いた。

「抱き締めてもいい......?」

私に彼の胸に飛び込む資格なんて毛頭ない。

そう分かりきっているのに、恋心は理性の言うことを聞いてくれなかった。
 
「......抱き締めて」

私は罪悪感に苛まれながら、視線を落として静かに彼を求めた。

すると広務さんは箍が外れたように力強く私を胸に引き寄せて、苦しいくらいに、きつく抱き締めた。

「広務さん......苦しいよ......。そんなに、ギュッてされたら......」

「ダメ。絶対に、この腕から優花を離さない......」

今日、出会った、その時から。彼は私を抱き締めること、私は彼に抱き締められること、それが互いの切望だったのだ。

願わくば、このまま時が止まればいいのに......。

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