真心の愛を君に......。 〜 運命の恋は結婚相談所で ~
「ごめん......。考え事してたから、ちょっとボーッとしちゃってた......」

「考え事って...... 、成瀬の事だね」

ジークの鋭い追求に、今更嘘をつく余裕など無く。私は気まずそうに頷いた。

「LINE送っても既読にならないし、電話しても繋がらないし。今までアイツと一緒にいたんだね......。それで、あの事はアイツに話したの?」

「ううん......」

「こうしてる間にも、お腹の子は成長してるし、いつまでも、このままっていうわけにはいかない。そういう事、優花はきちんと分かってるんだよね......。でも、言えないのは、妊娠を告げたらアイツが何て言うか怖いからだろう?」

射抜くような眼差しで、ストレートに言葉をぶつけてくるジーク。その様子に、私は彼の真意を理解した。

いつかジークは言ってくれた。”ずっとオレの傍にいてほしい。......お腹の子と一緒に”と......。

ジークが、こんなに疲れた顔をしてエントランスに佇んでいた理由は、きっと私の帰りをここで、ずっと待っていてくれたからなんだ。

彼は私と会ったら、これからの事について話をするつもりでいたんだ。

「......広務さんには妊娠の事、言うつもりないよ」

こう言ったら、果たしてジークは気がつくだろうか?

自分が、お腹の子の父親であるという事に。

お腹の子の父親は自分だと、ジークが自覚してくれて、彼の口から前途ある未来が聞けたのなら、私は広務さんを諦める決心がつくかもしれない......。

「優花、オレはね。矛盾してるかもしれないけど、妊娠の事、成瀬に告げるべきだと思う。アイツがどう受け取ろうが、優花一人で抱え込むものじゃないよ。当事者である成瀬に、ぶつけるべきだと思う」

「......ジーク。私がね、広務さんに妊娠の事、言う必要が無いって思ってるのは、お腹の子の父親が彼じゃないからなの。私の、お腹の子の父親は......、ジーク、あなたなの」

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