真心の愛を君に......。 〜 運命の恋は結婚相談所で ~
電話口で店のスタッフへ、メッセージプレートに書く言葉を伝える際に、思わず頬が、ほころんだ。

彼女との未来が順調に進んでいるーー。

俺は照れ笑いしているのを電話越しのスタッフに気づかれまいと、平静を装い静かに電話を切った。

スマホをコートのポケットにしまって、ゆっくりと辺りを見渡していると道路の先から、こちらへと向かってくる一台のタクシーが見えた。

おそらく、あれが迎えのタクシーだろう。

予想通りタクシーは”17 タクシー乗り場”に止まり、俺はキャリーケースを引きながらタクシーに近づいた。

タクシーの運転手は、すぐに俺に気がついて車から降り、腰を低くしながら名前を聞いてきた。

「14時ご予約の、成瀬 広務様でいらっしゃいますか?」

「はい、予約の成瀬です」

「お待たせ致しました。お荷物お預かりいたします」

キャリーケースと現地で買った土産物の入った袋を運転手に渡した俺は、後部座席に座りタクシーが発進するのを待った。

その僅かな待ち時間のあいだ俺の手は自然とスーツの内ポケットにのびて、ニューヨークから肌身離さず携えてきた、彼女へ贈るエンゲージリングに触れていた。

ーー早く君の笑顔に会いたい......。

なめらかな質感の小箱を指先でなぞり、その中に煌めくエンゲージリングをはめた彼女を想像すると、胸が甘く締め付けられる。

男だてら少々、女々しいような妄想に口許をゆるませていると、荷物をトランクに押し込んだ運転手がタクシーに乗り込んできた。

「大変お待たせ致しました。それでは、発進致します」

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