真心の愛を君に......。 〜 運命の恋は結婚相談所で ～

駐車場に着いた時には、あれほど冷たかった優花の手は、しっとりと温まっていた。

このまま、ずっと握っていたいところだけど......。

俺は名残惜しくて。ゆっくり彼女の手を放すと、代わりに助手席のドアを掴んだ。

「乗って」

「うっ、うん......」

助手席に身を預ける際、彼女がチラッと目配せをした。その瞳は揺れていて、とても緊張しているようだった。

久しぶりに会うから、こんなに緊張しているのだろうか？

というか、何か怯えているような感じがするのは......。いや、きっと俺の思い違いだ。

二人っきりになれば、すぐに打ち解けるはずだ。

一瞬、胸によぎった、あるはずもない不安をかき消して、彼女が待つ愛車へと乗り込んだ。

「じゃあ、出発するよっ！」

「あのっ......、広務さんっ......」

ハイテンションな俺とは正反対の、か細い声が助手席から聞こえて、彼女の予想外の反応に困惑した俺は咄嗟に助手席の方を振り返った。

「うん？　なに......？」

覗き込むような俺の視線を遮るように、優花は目線を下に俯いた。

「うん......、あのね。あの......っ、まだ、お帰りなさいって言ってなかったから......」

何事かと息をのんだのも束の間。俺はホッと胸を撫で下ろし、悪びれた様子で身を竦ませる彼女の髪に優しく触れた。

「俺も。ただいまって言ってなかったね......。ただいま、優花」

「お帰りなさい。広務さん......」

俺をまっすぐに見つめて微笑む彼女に、心臓が壊れそうなくらい強く脈打つ。そうすると、自ずと男特有の感覚も通い出して、今すぐ彼女の唇が欲しい。

俺は車内という密室をいいことに、優花の唇を、そっと塞いだ。

「んっ......」

静かにキスを受けて入れてくれた彼女の唇は、瑞々しくて柔らかかった。深い安堵感に満たされた俺は”全て上手くいく”そう、思った......。